下肢静脈瘤の治療方法について重松宏先生
都庁前血管外科・循環器内科で行われている下肢静脈瘤治療に関して教えてください
下肢静脈瘤には、様々なタイプがあります。クモの巣状や網目状のものや伏在静脈が拡張蛇行したもの、その分枝が拡張したものなどがあり、それぞれに治療法は異なります。
最も多く行われるのは、伏在静脈が拡張蛇行したものに対するレーザによる焼灼術です。その他の静脈瘤に対しては、基本的には硬化療法※1がよく行われます。
逆流する伏在静脈を結紮する高位結紮法※2や、拡張蛇行した伏在静脈を抜去するストリッピング手術※3も時に行われます。
- (※1)
- 静脈内に硬化剤を注射し、逆流している静脈を閉塞させる治療法です。
- (※2)
- 足の付け根で弁不全を起こしている静脈を縛り、血液の逆流を防ぐ治療法です。
- (※3)
- 皮膚を2カ所切開し、静脈内に通した専用のワイヤーと悪くなった静脈を糸で結び、一緒に引き抜き、取り去る手術です。
さまざまな治療方法があるのですね
それぞれのメリットとデメリットを教えてください
現在では、殆どの伏在型下肢静脈瘤は、レーザやラジオ波を用いた焼灼術で治療が行われています。局所麻酔下での処置が可能で、傷は殆ど分からない位小さいこと、根治性(病気などを根本から完全になおすこと)も高く、手術時間も短いこと、などのメリットがあります。
ストリッピング手術は、根治性は高いものの傷が出来ること、多くの場合全身麻酔が必要であること、術後の神経障害が一定数見られること、などのデメリットがあります。
高位結紮法は小切開が必要で、再発の可能性が高いこと、根治性を高めるには硬化療法の併用が必要であること、などがデメリットです。
レーザ焼灼術で日帰り手術を行うメリットをお教えください
術後はそのまま帰宅が可能で、炊事・家事・洗濯・買い物などの日常生活に、制限が殆どなく、翌日からも日常生活や仕事に制限がありません。通常の生活を維持することで、術後の深部静脈血栓症※4の防止にも役立ちます。日帰りですので、入院費用も必要なく、手続きも簡単です。
- (※4)
- 体の深部にある静脈に血栓ができる症状です。
レーザ手術の費用は概算でどの程度かかりますか?
健康保険が適用されますので、負担割合に応じて異なりますが、手術費用は、片脚のみで5万円前後、両下肢で7~8万円程度です。
レーザ手術で治療すれば完治しますか?再発することもあるのでしょうか?
治療対象となった伏在静脈の再発率は極めて低く、ほぼ100%の治癒率です。ただ、下肢静脈瘤の本態(本当のようす)は、深部静脈から表在静脈への逆流を生じることにありますので、他の伏在静脈から、あるいは穿通枝(筋膜を貫いて深部静脈と表在静脈と交通する枝)からの逆流で、静脈瘤が出現することはあります。長時間の立ち仕事が続く職業(美容師、調理師、外科医など)の方は、再発予防が必要です。
定期的な検診は必要ですか?
術後に関しては、1週間以内に一度深部静脈血栓症がないことの確認のための受診が必要です。その後は、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月目に再発がないかの確認を行います。その後の受診は原則として不要です。
重松先生が下肢静脈瘤患者さんを診察される際の心構えなどをお教えください
下肢静脈瘤の本態は、深部静脈から表在静脈への逆流にあり、責任病変の診断が容易でない場合が少なくありません。超音波検査を駆使して正確な診断を心がけ、効果的な治療を行うことにあります。深部静脈弁不全の有無も重要なポイントになるでしょう。
重松先生が考えられるこれからの下肢静脈瘤治療について、お聞かせください
下肢静脈瘤に対するレーザ焼灼術は、画期的な治療法で患者さんに大きな福音を与えたものと言えます。焼灼対象となる静脈に対する局所麻酔法をより進歩させ、より短時間で患者さんの負担が少ない方法を求める必要があります。
患者さんの立場から、どのような病院を選べばよいでしょうか?
下肢静脈瘤に対するレーザ治療に関しては、日本静脈学会が実施施設や実施医に対する実施基準を設けています。規定された基準をクリアーした施設と医師で、血管外科医が行う施設で治療を受けられることをお勧めします。美容を目的とした医療機関は、余りお勧めできません。
重松先生ありがとうございました。
重松先生よろしくお願い致します。